三島神社の大蛇
(おおやのみずのみりゅう)

 大谷中学校の西の方に下大谷の観音様(かんのんさま)があります。今はだれもすんでいませんが、毎月19日の縁日(えんにち)の日だけは、世話人が交代で番をし、安産(あんざん)のおまもりやお札(ふだ)を出しています。

 むかしは、地元(ぢもと)の人はもちろん、ずいぶん遠くからもたくさんの人がおまいりにきたそうです。観音様の正しい名前は、摩尼山(まにさん)といい、尼(あま)さんが代々住職(じゅうしょく)をしていました。ご本尊(ほんぞん)には如意輪観世音(にょいりんかんのん)をおまつりしてあります。

 観音堂をおまいりして見上げると、りっぱな竜の彫刻(ちょうこく)が見えます。この竜が毎晩(まいばん)下の池に水を飲みにおりて来たという「水飲み竜」のお話をしましょう。

 ある晩、尼(あま)さんは仏様にあげる水をくみに下の池におりていきました。するとそこには竜(りゅう)が音を立てて水をすいこんでいるではありませんか。尼さんは、びっくりして立ちすくみました。

 竜は人に姿を見られたのを知ると、雷(かみなり)のような音と光を出して、もとの場所へもどって行きました。その後もたびたびこうしたことがあり、村人たちがさわぎだしました。竜を彫った彫刻師(ちょうこくし)に話すと、「私が精魂(せいこん)こめてほった竜だから、あるいはそういうこともあるかもしれません。しかし、人を驚(おどろ)かせてはもうしわけないので、竜が下におりないようにしましょう」といって、彫刻師は竜の目に釘(くぎ)を打ちつけました。

 それから竜は水を飲みにおりなくなりましたが、彫刻師のいうとおりに、毎晩、手桶(ておけ)に水をくんで、その下へ置くとつぎの日の朝は、一滴(いってき)も残さず水がなくなっていたということです。    
               (こどもえぶなむかしばなし第1集より)




観音堂の竜の彫刻(ちょうこく)